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調査研究結果報告
熊野がもたらす心理的効果に関する研究調査

pressroom_c_001.jpg熊野には時代を超えた世界が広がっているようでした。古道を踏みしめて木々に囲まれていると自然の神秘さが伝わってきます。熊野古道ウオーキングの心理的効果を調べた私の研究では、ただ単にリラックス効果だけでなく、自然や歴史等より大きな何かとのつながりを感じる体験が多く報告されました。自然、歴史、心理、という一見大きく異なる分野が一つになり新たな知を生み出すのが私にとっての熊野です。

お茶の水女子大学大学院 人間文化創成科学研究科准教授
岩 壁  茂

世界遺産「熊野古道」への旅行が及ぼす心理的影響について心理学的指標に用いた客観的データに基づきその検証を行った。具体的には、熊野の文化の根底にある「還り」、「癒し」といった効果や霊場」、「伝説」に彩られた熊野旅行が「人生の意義」、「生きる価値」などを深く考えるきっかけとなるかどうかについて検証した。

↓ 検証調査の目的  ↓ 調査方法  ↓ まとめ

検証結果の目的

2005年3月に「熊野古道の健康効果に関する調査」を行った。この調査の結果、熊野古道ウォーキングが「免疫機能の向上」、「ストレス軽減及び気分の改善」、「前頭連合野の機能向上」といった生理的・心理的効果をもたらすことが検証された。本調査では、前回の調査より深い部分での心理的効果に主眼を置き、熊野という場所が旅行者に対して一時的な「リフレッシュ」、「気分転換」にとどまらず「人生の意義」「生きる価値」といったより深い部分にまで影響を与えるかどうかについて検証した。

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調査方法

(1)調査体制

本調査は、和歌山県、お茶の水女子大学、(株)ライフバランスマネジメントによる、産官学共同からなる「熊野健康村ウェルビーイング調査プロジェクトチーム」が連携して行った。
和歌山県/お茶の水女子大学 岩壁茂/岩壁研究室(監修・調査企画・分析)/(株)ライフバランスマネジメント(調査運営事務局)

(2)実施機関

本調査は、平成18年1月~3月にかけて実施した。

(3)調査概要

熊野及び研修の心理的効果を測定するために、対象者を熊野旅行の有無でA・Bの2グループに分け、それぞれについて次の調査を実施した。

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◆「気分」についての項目◆

「充実感」「ポジティブな気分」で「熊野旅行群」の旅行前後に有意差が見られ、旅行後に心身のエネルギーの回復、リフレッシュされた感覚が得られたと考えられます。

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◆「Spirituality」についての項目◆

熊野旅行群のうち「気分項目」が上昇したグループを「熊野気分上昇群」として抽出して分析した結果、旅行前後の「困難に対するレジリエンス」に有意差、「寛容の精神」に傾向差が見られ、「困難に対しての精神的な強さ」「他者に対する許容的姿勢」が向上したと考えられます。

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◆「Generativity」についての項目◆

pressroom_c_009.gif「熊野気分上昇群」の旅行前後の「世代継承への関心」に傾向差が見られ、「次の世代のために何か考えたい、社会においての自分の役割や貢献を最大限にしたい」という思いが強くなっていると考えられる。
※Generativity:
「生成継承性」と訳され、中年期の成人が自分の子どもを育てるということのみならず、社会全体の次世代を育てていこうとする意識のこと。

◆楽観主義についての項目◆

「熊野気分上昇群」と「統制群」の比較では、いずれも事前事後で有意な差はなく、熊野旅行が「物事を軽く流す」という楽観主義の心理的傾向ではなく、人生の意味づけ、世界観というより深い心理的影響を与えると考えられる。

◆面接調査◆

熊野旅行前後2回の面接調査を行って、語り方の変化から、熊野旅行という体験の認知的変化について検証を行った。

  熊野旅行群 統制群
プロセス指標の出現数 20 3
感情指標の出現数 61 2
認知指標の出現数 29 10
受容指標の出現数 15 4
Generativityの出現数 52 14

熊野旅行群は感情的にはリラックスした、穏やかな感じを味わい、また熊野旅行を通じて日常生活ではあまり感じることがない世界や自然、歴史などのつながりを感じたり、意識するような体験があったと考えられる。自分自身について振り返り、自分の人生の意義を歴史、社会、新しい世代につなげるという認知的変化が見られた。

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まとめ

熊野は、一時的な「リフレッシュ」「気分転換」だけでなく、(1)個人が自分自身の人生について振り返り (2)自然、歴史的存在としての自分を位置づけを確認し (3)未来のための自分の役割について改めて考える場としてより心の深い部分に働きかけ「再出発」「よみがえり」を促進させる効果があると考えられる。また、一過性のリフレッシュでは日常生活に戻れば元通りになりがちでありますが、このように人生という根源的な部分の認知にプラスの影響を与えることは、日常生活に戻った後も継続的な効果をもたらす可能性があると考えられる。

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